理化学研究所と東京都市大学工学部の共同研究グループは、鉄鋼材料軽量化の鍵となるオーステナイト相分率の測定に成功した。
地球温暖化対策には自動車などの輸送機器の軽量化が急務
近年、地球温暖化対策として二酸化炭素(CO2)排出量の削減が求められており、自動車などの輸送機器では、軽量化による燃費向上が急務だ。
自動車の軽量化には、薄くかつ高強度の高張力鋼が適している。近年多く活用されつつある高性能な高張力鋼には、オーステナイトを活用して、高い延性と高強度を同時に実現した複相鋼がある。
複相鋼材の品質・性能を保つには、オーステナイトの相分率やその変化を正しく測定・制御することが重要。相分率を鉄鋼材料のバルクに対して測定するには、鋼材に対して透過性の高い中性子を用いる中性子回折法が有効だ。
しかし、その中性子源は研究用原子炉などの大型実験施設に限られ、企業の研究室や工場などでの利用が期待される小型中性子源では、ビーム強度が低くこれまで測定されてこなかった。
複相鋼の相分率を1%以下の精度で測定することに成功
今回、共同研究グループは、オーステナイトを含む2相からなる複相鋼をサンプルとして、RANSで中性子回折測定を行った。その結果、複相鋼のオーステナイト相分率を1%以下の精度で測定することに成功した。
この技術は今後、材料の基礎研究、新材料開発及び品質検査のために行われる研究室レベルでの相分率測定に利用されると期待できるとしている。
(慶尾六郎)