支援事業、ロンドン五輪のメダル獲得を目指す
2010年度の政府予算案で、五輪でメダル獲得が有望な競技・種目を支援する「チームニッポン マルチ・サポート事業」の予算額が、前年度の約6倍の18・8億円に大幅アップした。情報・医科学的な支援に加え、企業や大学と協力して用具開発にも着手する計画で、産官学のプロジェクトにメダル量産の期待が高まる。
医科学や栄養学、情報収集・分析などで支援するこの事業は08年度からスタートした試みで、12年ロンドン五輪を目指し、
国立スポーツ科学センター(JISS)に委託された。今年度は、
文部科学省と
日本オリンピック委員会(JOC)、JISSが競泳など8競技・種目を選んだ。
画期的なのは、選手の成長度などから、メダル獲得の可能性を評価している点だ。過去にメダルの実績がないトライアスロンの場合、JOCの強化費配分の基準となるランクはCと低いが、北京五輪で競技歴2年半の井出樹里が日本人過去最高の5位入賞。「強化次第でメダルに手が届く」と判断された。
国主導・産学連携で用具開発も着手
来年度は対象を計17競技・種目に拡大し、このうち4競技・種目は、14年ソチ五輪へ向けて冬季競技から選ぶという。また、新たな試みも始まる。メーカーや大学などと協力し、用具やトレーニング機器の開発に乗り出す。
強豪国では、五輪向けに用具や新素材を開発することが国家戦略として行われている。英国では、空気抵抗の少ない自転車などを開発。カナダも最先端の技術を駆使した用具をそろえ、地元のバンクーバー五輪に臨むという。JISSスポーツ情報研究部の和久貴洋・副主任研究員は「トップスポーツの勝敗は小差で決まる。差を縮めるのに用具は有用な手段」と国主導の開発の必要性を訴える。
「五輪はスポーツだけでなく、日本の総合力が問われる舞台。オールジャパンの英知を結集してメダルを獲得し、日本を元気づけたい」と、意気込む文科省関係者。約6倍に膨らんだ予算の成果は、ロンドンの大舞台で見られるか。