解体実験は、産学官連携のモデル事業
大型船舶を解体し、資源の有効活用を目指す「シップリサイクル」の実験事業が9日、室蘭市の室蘭港で始まった。
7月までに、1万2千トン級の自動車専用運搬船の解体作業を終える予定だ。
実験は、産学官連携で「先進国型シップリサイクルシステム」の確立を目指す国土交通省のモデル事業に指定されており、事業費は約3億円という。
室蘭工大が中心となり、鉄鋼、造船、スクラップ流通などの企業と行政など30団体でつくる「室蘭シップリサイクル研究会」が、2008年4月からこの事業に取り組んでいる。
これまではコスト視点のみで、安全・環境配慮なく…
鉄鋼などの資材を再資源化する廃船解体は、1980年代までは国内で行われていたが、採算が合わず人件費の安い海外に委ねるようになっていったという。
最近の廃船解体は、バングラデシュなどの発展途上国中心に行われることが多く、劣悪な作業環境のため死傷者が出たり、有害物質の流失などの問題が生じている。
このため昨年5月には、国際海事機関(IMO)で環境・安全対策を求める「シップリサイクル条約」が採択された。条約は早ければ2012年にも発効し、安全性と環境に配慮した船舶解体が各国に求められることになる。
世界に範たる室蘭方式の確立を目指して!
同研究会は、環境、安全に配慮して解体を進め、アスベストなどの有害物質の処理、解体後のくず鉄の有効活用を図る「先進国型」の再利用システムづくりを目指している。
解体は、コスト面から船舶を陸揚げせず、海面に浮かせ岸壁に接岸させたまま行うという。初めに船内の油類を抜き、上部構造物から解体していくが、最後に残る船底部分は、室工大などが開発中のウォータージェット・高水圧切断機による切断で、引火の危険を防ぐ方法をとる。
研究会座長の清水一道・室蘭工大准教授は、「安全で環境に優しく、かつコストの安い室蘭方式のシステムを開発し、世界に発信したい」と話している。
「室蘭シップリサイクル研究会」(清水一道)「先進国型シップリサイクルシステム」川崎汽船(株)